夫婦の話し合いで互いに条件の合意を取って離婚することを、「協議離婚」と言います。
日本における離婚は、約9割が「協議離婚」との統計があります。
夫婦間の協議で離婚が成立するなら、何度も裁判所に通う必要もありません。
話し合いさえスムーズに進めば、比較的短時間で離婚ができるのが協議離婚のメリットでしょう。
今回は「協議離婚」を考えている女性のために、公正文書に関する基礎知識を解説していきます。
「協議離婚」公正証書は自分で書いても良い?
「協議離婚」をする場合は、公正証書の作成をお勧めします。
調停離婚や裁判離婚と違って、夫婦間の話し合いだけで取り決める「約束事」は、時間の経過と共にうやむやにされる危険性があるからです。
公正証書があれば、夫が養育費を滞納して払ってくれない等の問題があった際、強制執行の手続きを「裁判の手続きを経ずに」行なうことができます。
支払義務者の給与や預貯金等を差し押さえることもできるのです。
なお、「公正証書」とは、国の公証制度に基づいて、法務省に属する機関で作成される公文書です。
公正証書の作成には、公証人が関与します。
夫婦間で取り決めたことを自分で書いた場合は、「私署証書」ですので、執行証書の機能を果たすことはできません。
「公証役場」に出向き、内容を公証人に伝えて作るというのが公正証書の作成方法です。
但し、公証役場とは、どちらかの代理をしたりアドバイスをする機関ではありません。
あくまでも合意した内容を、公正証書という書面に仕上げる場所なのです。
公正証書に記載すべき項目の合意が抜け落ちていたり、あいまいであれば作成することはできないことを理解しましょう。
「協議離婚」公正証書にかかる費用は?
証書に強制執行の効力があり、なお且つ費用が安く済む方法としては、「調停離婚に持ち込む」という方法もあります。
夫婦の協議で「合意」を取った上で、家庭裁判所に「調停を申し入れる」という方法です。
調停では親切にアドバイスも得られ、必要経費は数千円程度で済みます。
「調停調書」を作成してもらえば、公正証書と同等の効力がありますので、万が一の場合には強制執行の機能も果たします。
次に「公正証書」の作成費用について述べます。
「公正証書」を作成してもらう場合は、「公証人手数料」というものが発生します。
金額は、目的価格(慰謝料・財産分与・養育費等、法律によって得られる利益)によって規定が定められています。
目的価格が100万~200万円なら7千円の手数料、200万~500万円なら1万1千円の手数料が必要等、手数料は細かく決められています。
他には、弁護士等の法律の専門家に、公正証書の作成について相談することもできます。
また、公証役場における手続きまで弁護士に依頼するという人もいます。
こうした場合は、当然ながら相談料等が別途発生します。
「協議離婚」公正証書の書き方のポイント
協議離婚においては、「公正証書」による離婚契約が利用されることがあります。
公正証書は公文書としての力を持っていますので、離婚後に万一トラブルになったときに役立ちます。
もしも個人的に夫婦間で誓約書を作成しただけであり、離婚後にトラブルがあった場合は裁判を起こすことになります。
そうなれば弁護士に立ち合ってもらう等、多額の費用が発生することも考えられます。
■公的証書の記載項目
- 親権・監護権
- 養育費
- 面会交流の取り決め
- 財産分与
- 年金分割
- 慰謝料
- 借金清算・婚姻費用について
- 住宅の利用等について
まとめ
- 離婚の公正文書には強制執行力がある。
- 公正証書の作成には、公証人が関与する。
- 協議離婚の公正文書以外では、調停離婚に持ち込んで「調停証書」を作る方法もある。
- 公正証書を作成するためには、夫婦が内容に合意する必要がある。
夫婦の協議で決定した様々な「離婚の条件」は、その通りに執行してもらわなければ何の意味もありません。
公正証書は、離婚後にお互いに条件を守らせるためのものです。
一時的な感情や勢いで早々に離婚してしまうと、後で取り返しのつかないトラブルが発生することもあります。
財産分与や慰謝料、養育費等の「お金の支払いが滞る」ことになれば、一人親世帯の生活は一気に困窮を極めてしまいます。
いざというときに「強制執行力」を発揮できる文書を作成しておくことは、将来を担う子供のためにもなります。
どんな方法を選べば、離婚条件を自分と子供にとって有利なものにできるか、冷静且つ計画的に考えていきましょう。