日本では、夫婦の自由意思に基づき離婚を成立させることができます。
夫と妻の双方さえ「合意」すれば、離婚内容を決めて離婚届を出せば受理される仕組みになっているのです。
ただ、子供を背負ってシングルマザーとして生活することになる場合、どうしても気になるのが「お金の問題」でしょう。
離婚が決まった際、夫が「このお金で新生活を送れば良いよ」と大金を渡してくれるようなケースはめったにありません。
つまり、妻はあらゆる知識と知恵を駆使し、お金を確保する以外に方法がないのです。
さらに深刻な事態に追い込まれるのは、夫に多額の借金があるというケースです。
すでに愛情を感じない夫が借金まで抱えていれば、一日も早く関係を断ち切りたいのは当然です。
しかし、「財産分与」のことを考え、離婚したくても離婚できない妻がいるのが実情です。
そこで今回は、借金を持つ夫と離婚する方法について解説します。
借金がある夫と離婚したい
借金を持つ夫と離婚したいというケースは少なくありません。
仮に、夫婦の話し合いで離婚を決める「協議離婚」に持ち込んだ場合、夫が抵抗する可能性は充分に考えられます。
そこで家庭裁判所に「調停」を申し立てたとします。
しかし、「離婚調停」も夫婦の合意を取らなければならない点は協議と共通していますので、話が堂々巡りになる可能性は否めません。
では、最終手段である「離婚裁判」に持ち込むとどうでしょうか。
■裁判で認められる「法定離婚事由」
- 不貞行為(他の異性との性的関係を持つ)
- 悪意の遺棄
- 3年以上生死不明
- 強度の精神病であり回復の見込みがない
- 婚姻を継続しがたい重大な事由がある
夫の借金を理由に離婚を申し立てるとすれば、5つ目の「婚姻を継続しがたい重大な事由がある」に該当するでしょう。
また、借金以外にも婚姻生活を破綻に追い込んだ「非」が夫にないかどうかを今一度見極めてから、離婚方法を考えてみましょう。
「借金がある夫と離婚したい!」借金も財産分与の対象?
婚姻生活において、夫婦が蓄積してきた預貯金等の財産は、全て「財産分与」の対象になります。
マイホームや自家用車、生命保険や株式投資、ゴルフ会員権等も、夫婦共有の財産として認められているのです。
預貯金に関していえば、夫名義のものも妻名義のものも財産分与対象になります。
そして、住宅ローンという「負債」も財産分与の対象です。
「財産」とは、プラスのものだけではなく、マイナス(負債)も入るからです。
そこで、離婚を準備するためには、まず「財産」がいくら位あるのかを徹底的に調べて把握することが大切です。
夫婦それぞれの預貯金額、持ち家の時価、車の時価等、財産分与対象になるものは全て把握しておきましょう。
また、住宅ローンも財産分与対象ですので、完済できているか否かを調べることが大切です。
もしも生活費を補うために夫婦で負った借金があれば、支払い義務がありますので、合わせて調べることをお勧めします。
「離婚と財産分与問題」夫の借金を放棄したい!
世間では、「金の切れ目が縁の切れ目」という言葉が広く知られています。
夫に浪費癖があったり、生活費を家に入れてくれなかったりという、お金の悩みが離婚の引き金になることはよくあります。
では、夫の借金を放棄して、すっきりと関係を断ち切ることはできるのでしょうか。
結論からいうと、「夫が個人的に単独で作った借金」であれば、妻は継承することはありません。
たとえば夫が、自分が欲しかった高級ブランドを借金で買う、ギャンブルの支払いのために借金を負ったという場合、離婚後の妻には責任はありません。
但し、夫が個人的な借金をする際、「妻が連帯保証人になっていた場合」は、離婚の有無に関係なく返済義務が生じ続けます。
夫が借金の返済を滞りなく続けていれば問題はありませんが、支払いが止まれば即座に「連帯保証人」が代わりに支払わなければならないことを知っておきましょう。
まとめ
- 協議や調停で離婚が成立しない場合は、離婚裁判に持ち込むという方法がある。
- 財産分与には住宅ローン等の負債も含まれている。
- 但し、配偶者が単独で作った借金は分与対象にならない。
- もしも「連帯保証人」になっていれば、離婚しても支払い義務を背負う。
夫との離婚条件のうちの1つとして、「養育費」の問題も考える必要があります。
たとえ夫の借金を背負うことから免れたとしても、シングルマザーとして生きるためにはそれだけでは不充分です。
夫に決まった額の養育費を毎月支払わせていくためには、口約束ではなく「公正証書」や「調停調書」の作成も視野に入れておきましょう。
現在、約束通りの養育費を受け取れている母子世帯はわずか20%しかありません。
「公正証書」や「調停調書」には強制執行力がありますので、夫からの養育費支払いが止まった場合、夫の給与や財産を差し押さえることもできます。
子供と新たな人生をスタートすることで、子供に貧困を強いることのないようにしたいものです。